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改善提案をした人が潰される会社の共通点|正論が排除される構造

その会社のためを思って、改善提案をしただけだった。無駄な業務、非効率なルール、誰もが薄々おかしいと感じている慣習。

「言ったほうがいい」「変えたほうがよくなる」――そう思って声を上げた。

ところが数ヶ月後、空気が変わる。会議に呼ばれなくなり、雑談に混ざれず、評価は下がり、いつの間にか「面倒な人」扱い。最悪の場合、配置換え、干され、退職に追い込まれる。

よく考えるとおかしい。改善した人が評価されるどころか、潰される。問題を指摘した側が「問題児」になる。

この理不尽さは、個人の言い方や性格だけで説明できるものだろうか。

「言い方が悪かった」「空気を読めなかった」という説明

この現象は、よくこう説明される。

・「正論でも、言い方が悪かったんじゃない?」
・「上司の立場を考えずに言ったからだよ」
・「タイミングと空気が読めてなかったんだと思う」

つまり原因は、提案者のコミュニケーション能力不足。もっと柔らかく言えばよかった。根回しをすればよかった。上司を立てる言い方をすれば受け入れられたはずだと。

たしかに一理はある。実際、改善提案がうまく通る人も存在する。だからこそ、「潰されたのは本人の未熟さ」という説明は、それなりに説得力を持ってしまう。

だが、それですべて説明できるなら、なぜ似たような会社で、似たような結末が何度も繰り返されるのか。

なぜ“正しさ”そのものが嫌われるのか

言い方を変えても、根回しをしても、結果は同じだった。丁寧に資料を作り、数字を揃え、論理的に説明したのに、結局は「前例がない」「今は忙しい」「余計なことをするな」で終わる。

それどころか、改善提案を続けた人ほど、評価が下がり、孤立し、排除されていく。一方で、何も言わず現状に従う人は安定して残る。

ここに明確なズレがある。問題は「言い方」ではなく、改善そのものが歓迎されない会社が、確実に存在するという事実だ。

もし本当に「会社を良くしたい」文化があるなら、改善提案は多少不格好でも守られるはずだ。それなのに、改善した人が潰される会社では、毎回同じパターンで“出る杭”が処理されていく。

これは個人の問題ではない。会社そのものが、改善を受け入れられない構造になっている。ここを見ない限り、この違和感は永遠に解消されない。

視点の転換|「潰された」のではなく「構造的に排除された」

ここで視点を変えよう。改善提案をした人が潰されるのは、「言い方が悪かったから」でも「能力が足りなかったから」でもない。

その会社が、改善を受け入れられない構造を持っていた。ただそれだけだ。

多くの人は、会社を「合理的な組織」だと思っている。利益を最大化し、効率を上げ、正しい判断をする場所だと。だが現実の会社は、合理性よりも安定を優先する生き物だ。

改善とは何か。

それは「今のやり方は間違っている」と示す行為だ。つまり、過去の判断、既存の役職、今まで黙認されてきた無駄ををまとめて否定する行為でもある。

構造的に見ると、改善提案は「善意」ではなく「脅威」になる。改善が通るということは、誰かの無能、怠慢、既得権が露呈するということだからだ。

だから会社は、内容ではなく存在そのものを処理し始める。提案を潰すのではない。提案者を孤立させ、黙らせ、排除する。

これは感情論ではない。会社が自分自身を守るために取る、極めて合理的な防衛反応だ。

改善者が必ず負ける会社の内部構造

改善提案をした人が潰される会社には、共通する構造がある。それをシンプルに分解すると、こうなる。


【構造①】会社の評価軸が「成果」ではなく「波風を立てないこと」

表向きは成果主義でも、実際に評価されているのは「問題を起こさない人」だ。

・トラブルを指摘しない
・前例を壊さない
・上司の判断を否定しない

この条件を満たす人ほど、「扱いやすい」「安定している」と評価される。改善提案は、この評価軸と真っ向から衝突する。

【構造②】改善=誰かの責任が可視化される

改善が実行されると、必ず起きることがある。「じゃあ、なぜ今までやってなかったのか?」という問いだ。これはつまり、過去の意思決定者を責める構造を生む。

会社にとって一番都合が悪いのは、外部の敵ではなく、内部の正論だ。だから改善内容ではなく、改善者の人格・態度・空気感が問題にされ始める。

【構造③】多数派は「変わらないこと」に利得を持っている

現状のルールで回っている人は、変化から何も得ない。むしろ、仕事が増え、立場が揺らぐ。

結果として、多数派は無意識にこう動く。「今じゃなくていいよね」、「そこまで問題かな?」、「理想論すぎる」と。こうして、改善者は少数派になり、数の力で孤立させられる。

【構造④】会社は「正しい人」ではなく「従う人」で維持される

会社は理念で動いているように見えて、実際には「従順さ」で安定している。正しいことを言う人は、空気を揺らす存在だ。だから、排除される。これはブラック企業だけの話じゃない。むしろ、一見まともな会社ほど静かに起きる。


この構造の中では、どれだけ論理的でも、誠実でも、改善提案をした時点で勝敗はほぼ決まっている。負けたのは、あなたではない。勝てない構造に入ってしまっていただけだ。

あなたは「間違った会社」だったのか?

ここまで読んで、少し胸がざわついた人もいると思う。「これ、まさに自分の話じゃないか」と。

もしあなたが、「業務改善を提案した」、「非効率を指摘した」、「もっと良くできるはずだと思った」。その結果、評価が下がったり、居場所がなくなったなら。

それは本当に、あなたのやり方が悪かったのだろうか。それとも、その会社が変われない構造を抱えていただけなのか。

考えてみてほしい。その会社は

・意見を言う人が残っているか
・「空気を読む人」だけが評価されていないか
・改善よりも現状維持が優先されていないか

もし「YES」が多いなら、あなたが潰されたのではない。最初から、勝ち目のない構造に正論を投げ込んだだけだ。

ここで大事なのは、「じゃあ我慢しろ」でも「辞めるしかない」でもない。自分が今、どの構造に身を置いているのかを知ること。それだけで、次の一手はまったく変わる。

「正しいのに苦しくなる理由」を構造で理解する

構造録 第6章「正義と滅亡」では、なぜ正しい行動ほど孤立し、なぜ改革者ほど潰され、それでも「やる意味はあったのか」を、物語と構造で描いている。

ここで語っているのは、個人の性格論でも、処世術でもない。社会がどうやって正義を排除するのか、その設計図だ。

もしあなたが「正しいはずなのに報われなかった」、「間違っている側が残っている」というような違和感を抱えたまま生きてきたなら、それはあなたの欠陥ではない。

構造を知れば、自分を責める必要がなくなる。そして、どこで戦い、どこで降りるかを選べるようになる。答えを探す前に、まず「構造」を見てほしい。それが、構造録の役割だ。

👉 構造録 第6章「正義と滅亡」を読む