資本主義はなぜ環境問題を生みやすいのか?利益と無限成長の限界

資本主義と環境問題には、どのような関係があるのでしょうか。
「企業が自然を破壊している。」、「経済成長をやめなければ地球がもたない。」という主張を聞くことがあります。一方で、「技術革新によって環境問題は解決できる。」、「資本主義だからこそ、環境に優しい商品も生まれる。」という反論もあります。
どちらにも一面の真実があります。
資本主義では、生産手段を主に私人や企業が所有し、市場で商品やサービスを取引し、得られた利益を再投資することで資本を拡大していきます。
つまり、「資本 → 生産 → 販売 → 利益 → 再投資 → より大きな資本」という循環があります。この仕組みは、人類へ大量の商品、技術革新、便利なサービスをもたらしました。
しかし同時に、一つの根本的な問題があります。
企業が商品を作るとき、材料費、人件費、輸送費、電気代、広告費、税金などは企業の費用として計算されます。
では、森林を失う費用、大気を汚す費用、海に流れ出した廃棄物を処理する費用、温室効果ガスによって将来発生する損害、採掘によって生態系が失われる費用まで、商品の販売価格へすべて入っているのでしょうか。
必ずしもそうではありません。
経済学では、取引を行った本人以外へ負担が及ぶものを「外部性」と呼びます。IMFも、汚染による社会的費用が企業の私的費用へ十分反映されなければ、社会全体から見て財が過剰生産される可能性があると説明しています。(IMF)
ここに、利益を最大化する企業の合理性と、地球全体を長期的に維持する合理性が一致しない場合があります。
本記事では「資本主義だから環境破壊が起こる」と単純化するのではなく、なぜ現在の資本主義が資源消費、大量生産、大量廃棄を生みやすいのか、その構造を考えていきます。
資本主義そのものの基本構造は、「資本主義とは何か?仕組み・特徴・歴史・メリットと問題点をわかりやすく解説」で整理しています。
1. 資本主義はなぜ環境問題を生みやすいのか|先に結論
先に神格反転の結論を述べます。
資本主義は環境破壊を目的とした制度ではありません。しかし、利益、競争、資本蓄積、経済成長を中心に動くため、自然環境の損失が価格へ十分反映されなければ、資源を大量に使用する企業ほど競争上有利になる構造が生まれます。
ここが重要です。
企業経営者が自然を嫌っているから森林を伐採するわけではありません。工場の労働者が海を汚したいから商品を作っているわけでもありません。
多くの場合、それぞれの人は自分の仕事をしているだけです。
企業には、売上を作る、利益を残す、給料を払う、借金を返す、株主へ利益を還元する、競合企業に負けないという課題があります。
すると、企業Aが環境へ配慮して高価な材料を使い、製品価格が1万円になる一方、企業Bがより安価な資源を使って同程度の商品を7,000円で販売できるなら、消費者が価格を重視する市場では企業Bが有利になります。
企業Aだけが環境コストを負担しても、企業Bが負担しなければ競争条件が違ってしまいます。そのため環境問題は、「企業の良心に任せれば解決する問題」ではありません。競争市場では、自分だけが利益を犠牲にする行動を続けることが難しい場合があります。
つまり、環境に悪いことをしたい企業が勝つというより、環境負荷を価格へ反映しなくてもよいルールなら、それを反映しない企業が価格競争で有利になり得るという話です。
OECDが古くから掲げてきた「汚染者負担原則」も、この問題を前提としています。環境資源の劣化コストが価格へ十分反映されなければ、市場価格は資源の希少性を正しく表さないため、公共政策によって汚染防止・管理費用を汚染者へ負担させる必要があるという考え方です。(OECD法令)
資本主義の環境問題を考えるとき、どの行動をすれば利益が残り、どの行動をすれば競争で不利になるように制度が設計されているのかを見る必要があります。
2. 資本主義と無限成長|有限な地球で売上を増やし続けられるのか
資本主義が数学的に必ずGDPを増やし続けなければ存在できないわけではありません。
しかし現実には、以下のような圧力がかかります。
- 企業は売上を増やそうとする
- 投資家は投資額以上のリターンを求める
- 銀行は貸した金に利息を付けて回収する
- 労働者は賃金上昇を求める
- 政府も税収増加を求める
- 競争相手は新しい設備や商品へ投資する
その結果、今年より来年、来年より再来年と経済活動を拡大しようとします。
しかし、地球は大きくなりません。土地、森林、鉱物、淡水、魚、化石燃料、生物資源には物理的な限界があります。
UNEPとInternational Resource Panelの『Global Resources Outlook 2024』によれば、世界の天然資源採取量は過去約50年間でおよそ3倍となり、十分な政策転換がなければ2060年には2020年比でさらに約60%増える可能性があります。資源の採取・加工は、温室効果ガス排出や大気汚染、生物多様性損失などとも深く関係しています。(UNEP – UN Environment Programme)
ここに明確な矛盾があります。
経済には拡大圧力がある一方で、地球上の物質には限界がある。
ただし、「GDPが増える=必ず同じ割合で資源消費も増える」と考えるのも正確ではありません。
ソフトウェア、教育、研究、デジタルコンテンツ、サービス、知識のように、鉄や木材を大量に消費しなくても経済価値を増やせる分野があります。さらに省エネ、リサイクル、軽量化、長寿命化によって、同じ生活水準を少ない資源で維持することもできます。
UNEPの2024年報告も、政策と生産・消費構造を変えることで、資源利用を現在の延長線上より大幅に抑えながら、経済と人間開発を改善できるシナリオを示しています。(UNEP – UN Environment Programme)
したがって問題は、経済成長そのものが絶対悪なのではありません。問題は、売上を増やすために物質消費まで増やし続ける必要がある現在の構造です。
3. なぜ「使える資源は使う」という競争になりやすいのか
企業同士が競争するとします。同じ机を作る会社Aと会社Bがあります。
会社Aは、
- 森林保護された木材を使う。
- 長期間使えるよう厚い木材を使う。
- 修理できる構造にする。
- 廃棄時に分解しやすくする。
- 環境負荷の少ない塗料を使う。
とします。当然、コストが上がる可能性があります。
一方、会社Bは、法律で許される範囲で最も安い材料を使い、修理可能性や廃棄後の処理まで考えません。
もし消費者が「安い方」を選び続ければ、会社Bの方が売れる可能性があります。
ここで会社Aの経営者が、「地球環境のためだから、利益が減ってもいい。」と言い続けられるでしょうか。
短期間ならできます。しかし、競合が市場シェアを奪い、会社Aが赤字になれば、従業員の雇用まで維持できなくなります。
だから、一社だけの善意には限界があります。環境に配慮する行動が企業の利益にもなるか、少なくとも環境を無視した企業が競争上有利にならないルールが必要です。
環境問題はしばしば「外部不経済」の問題になります。
例えば、ある企業が商品を1,000円で作り、100円の利益を得るとします。しかし、その商品を作った結果として10年後に森林再生へ500円必要になったとしても、その500円を企業が負担しなければ商品の販売価格には現れません。
企業から見ると、利益100円。社会全体から見ると、別の場所で環境負担500円ということが起こり得ます。
IMFが説明するように、私的費用と社会的費用が一致しなければ、市場は社会全体から見て過剰な生産へ向かう可能性があります。(IMF)
つまり環境問題とは、自然を無料で利用できる部分が残っていることとも言えます。
- 大気へ二酸化炭素を放出する
- 川へ汚染物質を流す
- 森林を減らす
- 地下水を使う
- 生態系を壊す
これらの損失が商品価格へ十分含まれていなければ、自然が企業活動の隠れた補助金のような状態になることがあります。
神格反転で見るなら、これも「誰が価値を受け取り、誰が費用を負担しているか」という分配問題です。利益は企業や株主へ入る。しかし、環境負担は地域住民、将来世代、他国、生態系へ広がる。
このように、利益を受け取る主体と、費用を負担する主体が分離したとき、環境問題は拡大しやすくなります。
4. 長持ちする商品ほど売れないという矛盾
環境だけを考えるなら、商品は長く使える方がよいでしょう。
- 机
- 椅子
- 冷蔵庫
- 洗濯機。
- スマートフォン
- 自動車
一度作ったものを20年使えるなら、5年ごとに作り直すより材料や製造エネルギーを減らせる可能性があります。
しかし企業側から見ると違う景色があります。
一度商品を販売した後、その人が20年間買い替えなければ、その顧客から次の売上は生まれにくいです。一方、5年ごとに買い替えるなら20年間で複数回販売できます。
ここで、環境にとって望ましい「長寿命」と、売上にとって望ましい「買い替え」が衝突する可能性があります。
ただし、この話をするときには注意が必要です。
「企業はわざと数年で壊れる商品を作っている」と、すべての商品について断定することはできません。商品の寿命は価格、重量、安全性、材料、技術、バッテリー、使用環境など多くの要因によって変わります。
意図的に壊れやすく設計したと個別企業について主張するには、その証拠が必要です。仮にあったとしても、わざわざ外部に漏らすようなことはしないでしょう。
最も昔の家電製品の方が長持ちしていたとか、昔のものの方が丈夫だったって感覚は、50代以上の方ならお持ちかもしれません。
耐久性、修理可能性、アップグレード可能性を高める必要があるという問題自体は現実に政策課題になっています。
EUのEcodesign for Sustainable Products Regulationは、製品を長寿命化し、修理しやすくし、アップグレードや再利用、リサイクルをしやすくすることを制度目的に含めています。(European Commission)
なぜそのような制度が必要になるのでしょうか。
それは、市場へ完全に任せるだけでは、長く使える商品を作る企業が必ず勝つわけではないからです。
- 毎年新モデルを出す。
- 新しいデザインを作る。
- 旧型を古く見せる。
- ソフトウェアの機能を新型中心へする。
- 修理より買い替えを魅力的にする。
という販売方法も可能です。資本主義では、生産能力が増えれば、同時にその商品を購入してもらう需要も必要になります。
同じ「耐久性向上」でも評価が変わる
環境と企業売上では、見える結果が違う
生産能力が増えても、商品が長持ちすれば新たな需要は生まれにくくなります。だからこそ、何を「成功」と評価するのかが重要になります。
環境側から見れば、耐久性向上により資源消費が減ります。企業売上だけから見れば、耐久性向上により買い替え需要が減ります。この評価の違いが重要です。
5. 食品ロス|食べられるのに捨てる社会はなぜ生まれるのか
私はホテルで働いていたことがあります。宴会が終わった後、まだ食べられる料理が大量に残っている光景を何度も見ました。
- テーブルに並べられた料理
- ほとんど手が付いていない食品
- 中途半端に残された料理
宴会が終われば、その多くは片付けられます。
大学時代に参加した学会の懇親会でも似た光景を見ました。参加者が不足しないよう、軽食や料理が大量に用意されていました。しかし終了時間になると、まだ食べられるものが残っています。
これは私個人が見た経験であり、ホテル業界や学会全体をこの経験だけで一般化することはできません。
しかし食品ロスという問題自体は実在します。2024年度の日本の食品ロスは推計461万トンで、事業系237万トン、家庭系224万トンでした。事業系の内訳では、外食産業から約70万トンが発生しています。(消費者庁)
世界では2022年に約10.5億トンの食品廃棄物が発生し、消費者が利用可能だった食料のおよそ5分の1に相当するとUNEPは推計しています。同じ年に世界では7億8,300万人が飢餓の影響を受けていました。(UNEP – UN Environment Programme)
ただし、日本のホテルで余った料理を、そのまま海外で飢えている人へ送れば解決するという単純な話ではありません。
食品には保存、衛生、輸送、温度管理、賞味期限、安全責任などがあります。食品不足の地域には、物流や所得、紛争、農業生産、政治など別の問題も存在します。
それでも、大量の人が食料不足に苦しむ世界で、大量の食料が捨てられているという資源配分上の矛盾は残ります。
なぜホテルでは料理を余裕を持って準備するのでしょうか。
- 足りなくなると困る。
- 客から「料理が少ないホテル」と評価されたくない。
- 豪華に見せたい。
- 予測より多くの人が食べても対応できるようにしたい。
こうした理由があります。
一つ一つは理解できます。ところが全体として見ると、不足するリスクを避けるために、余剰を常態化させることになります。
市場では、「ちょうど必要な量だけ用意して食品ロスゼロ」よりも、「豪華な料理が大量に並んでいる」方が高く評価されることもあります。
すると、ホテル側も、客に選ばれるために量を増やす。競合も増やす。結果として、顧客満足を競争した結果、食品廃棄が増えるという逆説が起こり得ます。
資本主義における環境問題は、このように誰か一人の悪意ではなく、一人ひとりが市場の評価に合わせて合理的に行動した結果、全体では不合理になる形で生じることがあります。
6. スマートフォンの買い替え|まだ使えるものを交換する意味
私自身、iPhoneを使い始めて約1年ほど経った頃、携帯ショップで声を掛けられたことがあります。
「今乗り換えた方がお得です。」
いくつものメリットを説明され、新しい機種の色もきれいだったため、そのときは乗り換えました。
確かに新しいiPhoneになりました。画面も少し大きくなりました。
しかし、後から考えると、電話、カメラ、SNS、ウェブ、アプリ、など、私が使っていた主要な機能には大きな違いはありませんでした。カメラの性能が段違いとか説明された記憶はありますが、使っている分にはそこまで違いを感じません。
以前のiPhoneもまだ使用できたため、本当に交換する必要があったのだろうかと思いました。
スマートフォン一台には多くの部品が使われています。
- 金属
- ガラス
- 半導体
- バッテリー
- 電子回路
- プラスチック
それぞれを採掘、加工、製造し、工場で組み立て、世界中へ輸送します。使用済み端末を回収して再利用やリサイクルすることはできます。
しかし、まだ使える製品を使い続けることと、新しい製品を作って旧製品をリサイクルすることは同じではありません。リサイクルにも回収、分解、輸送、処理、再精製などの資源とエネルギーが必要です。
世界全体では、2022年に約6,200万トンの電子廃棄物が発生し、そのうち適切に回収・リサイクルされたことが記録されている割合は22.3%でした。UNITARとITUは、電子廃棄物の発生量が正式に記録されたリサイクルの伸びを大幅に上回っていると報告しています。(UNITAR)
だから私は現在、スマートフォンについて、使えなくなるまでできる限り長く使う方向へ変えています。
これは「新商品を買うな」という話ではありません。
- 本当に必要な性能が増えた。
- 壊れた。
- 仕事上必要になった。
- バッテリーや安全性に問題が出た。
そうした理由で買い替えることには意味があります。
問題なのは、まだ十分使える商品まで、「新しいから」という理由だけで交換する社会構造です。
- 企業は新製品を売らなければ売上になりません。
- 販売店には契約目標がある場合があります。
- 消費者には新しいものを使う喜びがあります。
- 広告も買い替えを促します。
一人ひとりの行動だけ見れば自然です。しかし、その積み重ねが資源採取と電子ごみになります。
7. 「リサイクルすれば問題ない」は本当なのか
ここで、「使い終わったら全部リサイクルすればいいのでは?」という反論があります。
もちろんリサイクルは重要です。
- 鉄
- アルミ
- 銅
- 紙
- ガラス
- プラスチック
- 電子部品
再利用できるものを回収し、原料へ戻すことで新たな資源採取を減らせます。
IPCCも産業部門の脱炭素には、材料効率、リサイクル、循環経済、長寿命設計などを組み合わせることが重要だとしています。例えば鉄鋼では、長寿命設計、再利用、少ない材料での設計などにより需要そのものを低減できる可能性が指摘されています。(IPCC)
しかしリサイクルだけですべて解決するわけではありません。
なぜなら、100個の商品を作る、100個回収する、100個すべての材料を完全に戻すことを無限に繰り返すことは、現実には難しいからです。
回収されないものがあります。混合素材があります。品質が低下するものがあります。処理にエネルギーが必要です。輸送も必要です。一部の材料は失われます。
電子廃棄物の現状を見ても、世界で発生するすべての電子ごみが循環しているわけではありません。(UNITAR)
だから優先順位としては、以下です。
資源を守るための優先順位
リサイクルの前に、まず「捨てる量」を減らす
リサイクルの前にまず捨てる量を減らすという発想が必要です。
さらに、生産効率が上がったからといって総資源消費が必ず減るとは限りません。例えば以前は1台作るのに100の資源が必要だったものを、技術革新によって80で作れるようになったとします。
一台当たり20%削減です。
しかし価格が下がって販売数が2倍になれば、以前は100×100万台=1億だったものが、改善後には80×200万台=1億6,000万となり、合計資源使用量は増えます。
こうした効率化後の需要増加は「リバウンド効果」と呼ばれる問題の一つです。IPCCも、デジタル化、シェアリング、循環経済などが資源利用削減へ貢献する一方、政策設計によってはリバウンドや消費増加を招く可能性があると指摘しています。(IPCC)
つまり、一個を環境に優しくするだけでなく、何個必要なのかまで問わなければなりません。
8. 資本主義と消費社会|「まだ使える」が市場では弱くなる
現代資本主義では大量生産だけではなく、大量消費を維持する仕組みも発達しています。
- すでに机を持っている。
- すでにスマートフォンを持っている。
- 服もある。
- 車もある。
- 家電もある。
それでも売上を増やすなら、もう一度買ってもらう理由が必要です。そこで、新型、限定、新色、最新機能、流行、高級感、性能向上、ブランド、社会的地位などが使われます。
もちろん、新商品には本当に価値のある革新もあります。
以前より消費電力が少ない冷蔵庫。安全性が高い自動車。性能が大きく向上したコンピューター。障害のある人にも使いやすい製品。こうした買い替えには社会的な意味があります。
しかし、「使えるか」ではなく、「新しいか」が購入基準になれば、使用可能年数と実際の使用年数がずれていきます。
この問題は、「資本主義は人を幸せにしないのか?豊かさが増えても満たされない理由」とも関係します。そこでは、「生産性向上 → さらに生産する」ではなく、「生産性向上 → 同じ豊かさを少ない労働で得る」という評価基準を提示しました。
環境についても同じです。
環境から見た評価基準の反転
「何個売れたか」ではなく、「どれだけ少ない資源で暮らせたか」
評価基準は販売量・売上
少ない資源で維持できる
評価基準は生活の維持と資源効率
これまでなら、「耐久性向上→買い替えが減る→売上が減る→問題」となりやすかったものを、「耐久性向上→買い替えが減る→資源採取が減る→廃棄物が減る→同じ生活を少ない資源で維持できる」と評価します。
つまり、「何個売ったか」から「同じ生活をどれだけ少ない資源で維持できたか」へ評価基準を反転する必要があります。
9. 資本主義では自然の価値を金額にしないと守れないのか
資本主義にはもう一つ難しい問題があります。
市場は基本的に価格を通して物事を評価します。木を伐採して材木にすれば価格が付きます。石油を採掘すれば価格が付きます。土地を開発すれば価格が付きます。
しかし、以下のことは、市場価格だけでは表現しにくいです。
- 森がそこにあること。
- 昆虫が生きていること。
- 川がきれいであること。
- 野鳥が繁殖できること。
- 将来世代にも資源が残っていること。
伐採して100万円になる森林があるとして、伐採しない状態の森林による水源涵養、炭素吸収、生態系、土壌保全、景観、地域文化まで100万円という値札で表示されるとは限りません。
すると企業の会計上、
- 森林を残す=0円。
- 森林を伐採して販売する=100万円。
のように見える場合があります。しかし、社会全体では、本当は0円ではありません。
IMFの2024年の自然関連リスクに関する分析も、自然が水、食料、生態系サービスなどを経済へ提供している一方、水、大気汚染、土地利用などには外部性や共有資源の問題があると整理しています。(IMF)
つまり、「市場に価格がない=価値がない」ではありません。
神格反転ではここを非常に重視します。値段が付いたものだけが価値ではありません。
- 空気
- 水
- 土
- 森
- 人間の労働
- 地域のつながり
- 家族と過ごす時間
こうしたものは、市場で直接販売されなくても生活を支えています。この問題は、「価格と価値は同じではない」という考えにもつながります。
自然を守る理由を「この森はいくら儲かるのか」だけで決めれば、金銭へ変換できない価値が弱くなる危険があります。
10. 資本主義だけが環境破壊を起こすわけではない
ここは必ず書いておかなければなりません。
環境問題は資本主義だけで発生するものではありません。
国家が生産手段を所有する社会でも、生産量、国家目標、工業化、軍事力、農業生産を最優先すれば、環境破壊は起こります。
代表的に知られているのがアラル海です。
中央アジアでは河川の水を大規模灌漑へ振り向けた結果、かつて世界有数の内陸湖だったアラル海が大幅に縮小しました。NASAは、アムダリヤ川とシルダリヤ川の水が綿花やコメなどの灌漑へ大量に転用されたことを縮小の主要因として説明しています。(NASA Science)
これは市場競争によって起きた環境問題とは性質が違います。
重要なのは、資本家が自然を支配しても環境問題は起きるし、国家が自然を支配しても環境問題は起こり得るということです。
だから、「資本主義をやめて国家へ全部渡せば環境問題は解決する。」とはなりません。
国家が、GDP、生産量、輸出量、国威、軍事力を最優先すれば、企業と同じように自然を手段として扱います。私が「資本の集中」と「国家権力の集中」の両方を警戒する理由でもあります。
したがって、問題の本質は、誰が所有しているかだけではありません。
より根本には、自然や人間を無限に投入可能な資源として扱い、数字の成長を最終目的にしてしまうことがあります。
11. 解決策|国家主導型社会主義と循環型経済をどう組み合わせるか
では、どうすればいいのでしょうか。
神格反転では、現在の資本主義を完全放任するのでも、すべての企業活動を国家へ吸収するのでもなく、「国家主導型社会主義+市場競争+地域分散+労働本位制」という方向を考えています。
詳しくは「資本主義の代わりはあるのか?次の社会として提案される仕組み」で制度全体を整理しています。
神格反転で「国家社会主義」と表現する場合がありますが、ここでいう国家社会主義は歴史上のNational Socialism、すなわち、一般的に多くの人が思うナチズムを意味しません。
誤解を避けるなら、「国家主導型社会主義」です。
水、基幹電力、重要交通、戦略的資源、廃棄物処理、基礎的な環境インフラなど、人間の生存と国家の長期安全保障に直結する分野については、短期利益だけでなく数十年単位で管理する。
その一方で、家具、服、ゲーム、飲食、娯楽、一般的なサービス、多くの製造業などでは民間企業、市場、起業、競争を残す。
つまり、市場をなくすのではなく、市場で競争させてよい領域と、短期利益だけへ任せてはいけない領域を分けるという考えです。
11.1. 環境コストを価格へ戻す
第一に必要なのは、企業が環境へ押し付けた費用を企業会計へ戻すことです。二酸化炭素、汚染、廃棄物、採掘、水使用などに社会的費用があるなら、それを価格へ反映します。
汚染した方が安い、廃棄した方が安い、修理せず新品を売った方が安いという状態を変える必要があります。
これは市場を否定する政策ではありません。
むしろ、市場価格へ隠れていた費用を戻す政策です。
11.2. 長持ちする製品ほど評価されるようにする
次に、耐久性、修理可能性、部品供給、バッテリー交換、アップグレード、分解可能性を商品の価値として表示します。
EUのEcodesign for Sustainable Products Regulationが、耐久性、修理性、再利用性、資源効率などを製品政策へ組み込んでいる方向は参考になります。(European Commission)
例えば、5年使える製品、10年使える製品、20年使える製品があるなら、価格だけでなく、想定寿命1年当たりの価格まで比較できるようにします。
10万円の商品でも20年間使えるなら、1年5,000円です。5万円の商品でも3年で買い替えるなら、1年約1万6,700円です。
消費者側から見ても、長寿命製品の方が得になる場合があります。
企業も、長持ちするほど売れないではなく、保証、修理、保守、アップグレード、部品交換、中古再販によって利益を得られるビジネスモデルへ変えればよいです。売上の源泉を、廃棄と新品販売だけに置かないことです。
11.3. 食品は「余ったら捨てる」から「余らせない」へ
食品についても、大量に用意して、豪華に見せ、余り、廃棄するのではなく、
- 予約人数から必要量を予測する。
- 小皿で追加提供する。
- 余った未提供食品を安全基準の下で寄附へ回す。
- 食べ残しを安全に持ち帰れる仕組みを作る。
- 飼料や肥料、エネルギーへ循環する。
という複数の段階が必要です。
日本でも2024年度に461万トンの食品ロスが発生しており、政府は食品寄附、納品期限緩和、賞味期限延長、外食時の持ち帰りなどを進めています。(消費者庁)
ただし、最も上流にあるのは、そもそも食べないものを作りすぎないことです。
11.4. 生産性向上を「生産量増加」以外へ使う
そして最も根本的なのが、評価基準です。
生産性向上を何に使うのか
同じ技術進歩でも、成果の使い方で社会の方向は変わる
現在は、「生産性向上→一個あたり安く作れる→もっと作る→もっと売る→売上が増える→成功」となりがちです。
しかし、「生産性向上→同じ量を少ない資源で作る→同じ量を少ない労働で作る→商品の寿命を延ばす→資源採取を減らす→労働時間も減らす→労働時間も減らす→生活水準は維持する」という方向にもできます。
IPCCも、気候対策を「一次エネルギーや物質をどれだけ使うか」ではなく、人間が必要とする移動、住居、快適性、栄養といったサービスを少ない資源でどう提供するかという観点から考えています。(IPCC)
この発想は神格反転の考え方と非常に近いです。
人間が欲しいのは、100キロの鉄ではありません。安全に移動できることです。1,000kWhの電力ではありません。明るい家、暖かい部屋、動く機械です。年間100着の服ではありません。身体を守り、自分が好きな格好をできることです。
スマートフォン10台ではありません。通信、情報、娯楽、創作ができることです。必要なのは物の量ではなく、物が提供してくれる豊かさです。
だから、生産量を最大化することと、豊かさを最大化することを分けなければなりません。
12. まとめ|地球を食べ尽くしてまで、何を増やしたかったのか
私たちは、「経済成長」という言葉を当たり前のように使います。
- GDPを増やす。
- 売上を増やす。
- 利益を増やす。
- 販売台数を増やす。
- 生産量を増やす。
しかし、なぜ増やすのでしょうか。
- 人間が食べるため。
- 住むため。
- 移動するため。
- 暖かく暮らすため。
- 楽しむため。
- 病気を治すため。
- 学ぶため。
本来、経済はそのために存在しています。
ところが、生活を豊かにするために生産していたはずが、いつの間にか、生産を増やすために消費するようになります。
- まだ使える。でも新型が出たから交換する。
- まだ食べられる。でも余ったから捨てる。
- まだ着られる。でも流行が終わったから買い替える。
- まだ直せる。でも新品を買った方が安い。
この一つ一つは小さな行動です。しかし世界中で数十億人が同じ行動をすれば、巨大な資源消費になります。UNEPは、現在の延長線上では世界の資源採取量が2060年に2020年比で約60%増える可能性を警告しています。(UNEP – UN Environment Programme)
では、2060年の次はどうするのでしょうか。さらに60%増やすのでしょうか。その次は。さらに次は。
地球の大きさは変わりません。
この問いをすると、「技術革新で解決すればいい。」という答えがあります。
技術革新は必要です。再生可能エネルギー、高効率モーター、省エネ住宅、リサイクル技術、代替素材、農業技術。どれも必要です。
しかし、技術革新だけでは、増えた効率を再び生産量増加へ使う可能性が残ります。
だから技術だけでなく、何を成功と呼ぶのかを変える必要があります。
- 1億台売ったではなく、以前100の資源を使っていた生活を50で維持できた。
- 去年8時間働かなければ得られなかった生活を、今年6時間で得られた。
- 10年しか使えなかった製品を20年使えるようにした。
- 捨てていた食料を半分にした。
こちらも「成長」と呼べるはずです。むしろ、人間の生活そのものは豊かになっています。
神格反転が目指すのは、貧しくなる社会ではありません。物をすべて捨てる社会でもありません。文明を後退させることでもありません。逆です。技術を使う、科学を使う、機械を使う、AIを使う。
しかしそれらを、さらに地球を消費するためではなく、少ない負担で同じ豊かさを得るために使う。
これが必要なのではないでしょうか。
資本主義の最大の問題は、利益を生み出すことではありません。競争することでもありません。
問題は、利益という数字に表れないものを、価値がないものとして扱ってしまうことです。
森には値札がありません。川にもありません。未来の子どもが使う資源にもありません。
だからといって、価値がないわけではありません。
企業の利益や国家のGDP、人間の給料は重要です。
しかし、それらはすべて、人間が地球上で生き続けられることの上に存在しています。地球を食べ尽くして数字だけ増えた社会を、豊かな社会と呼ぶことはできません。
資本主義を反転して見るなら、「どれだけ売ったか」ではなく、「どれだけ少ない資源で豊かに生きられるようになったか」。そこを評価する社会へ変える必要があります。
13. 見えない構造を読み解きたいあなたへ | 神格反転の書
神格反転プロジェクトでは、『神格反転の書』を無料でプレゼント中です。『神格反転の書』は、社会や人生に存在する「奪う構造」「支配の構造」「尊厳を失わせる仕組み」を、自分自身の目で読み解くための文書です。
何かを信じ込ませるための教義ではありません。正しい側と悪い側を単純に決めるためのものでもありません。
同じ搾取に、会社、商売、教育、恋愛と名前を変えて何度も巻き込まれないために。興味のある方は、こちらから受け取ってみてください。
説明文よりも物語で見えない構造を読み解きたい方は物語も用意しています。社会の構造、奪う者と創る者、そして真実を取り戻す物語を、文章やイラストの形で展開しています。
こちらは有料ではありますが、1話から3話のみ無料でお読み頂くことが可能です。もしも説明文ではなく、物語の世界を探検したいという場合は、物語録をチェックしてみてください。
※現在は小説のみ公開中ですが、順次完成次第、対話録、漫画録を更新して参ります。
敵は嘘により栄え、真実により滅ぶ。
やっていることが、その人の正体。
14. 参考文献
資本主義・利益・競争・経済成長の構造
-
神格反転
「資本主義とは何か?仕組み・特徴・歴史・メリットと問題点をわかりやすく解説」
資本主義における私有財産、市場取引、利益、資本蓄積、再投資などの基本構造を確認するために参照。
資本主義とは何か?仕組み・特徴・歴史・メリットと問題点をわかりやすく解説
-
神格反転
「資本主義ではなぜ経済成長が必要なのか?止まると不況になる仕組み」
企業間競争、投資、雇用、債務、期待収益などを通じて、現代資本主義に経済成長への圧力が生まれやすい構造を確認するために参照。
資本主義ではなぜ経済成長が必要なのか?止まると不況になる仕組み
-
神格反転
「資本主義は本当に自由競争なのか?資産・情報・独占でスタート地点が変わる仕組み」
企業間の自由競争と、資本、情報、規模、独占などによって競争条件が変化する構造を確認するために参照。
資本主義は本当に自由競争なのか?資産・情報・独占でスタート地点が変わる仕組み
外部性・汚染者負担原則・自然資本
-
Helbling, T.
“Externalities: Prices Do Not Capture All Costs.”
Finance & Development, International Monetary Fund.
環境汚染などによって、企業が負担する私的費用と社会全体が負担する社会的費用に差が生じる外部性と、市場価格がその費用を十分に反映しない場合の問題を確認するために参照。
https://www.imf.org/external/pubs/ft/fandd/basics/38-externalities.htm -
OECD(1972)
Recommendation of the Council on Guiding Principles concerning International Economic Aspects of Environmental Policies.
環境資源の劣化費用が価格へ十分に反映されない場合の市場上の問題と、汚染防止・管理に必要な費用を汚染者が負担する「汚染者負担原則」を確認するために参照。
https://legalinstruments.oecd.org/public/doc/4/4.en.pdf -
Gardes-Landolfini, C., Oman, W., Fraser, J., Montes de Oca Leon, M. & Yao, B.(2024)
Embedded in Nature: Nature-Related Economic and Financial Risks and Policy Considerations.
IMF Staff Climate Note, 2024/002.
自然資本、生態系サービス、自然環境への経済活動の依存、自然損失が経済・金融システムへもたらすリスク、外部性や共有資源に関する問題を確認するために参照。
https://www.imf.org/en/-/media/files/publications/staff-climate-notes/2024/english/clnea2024002.pdf
天然資源・経済成長・資源消費
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United Nations Environment Programme & International Resource Panel(2024)
Global Resources Outlook 2024: Bend the Trend – Pathways to a Liveable Planet as Resource Use Spikes.
世界の天然資源採取量、資源利用と気候変動・生物多様性損失・汚染との関係、経済成長と資源利用の将来見通しを確認するために参照。政策転換がなければ、2060年の資源採取量が2020年比で約60%増加する可能性についても参照。
https://www.unep.org/resources/Global-Resource-Outlook-2024 -
Intergovernmental Panel on Climate Change(2022)
Climate Change 2022: Mitigation of Climate Change, Working Group III, Chapter 5: Demand, Services and Social Aspects of Mitigation.
人間が必要とするものを資源そのものではなく、移動、住居、栄養、快適性などの「サービス」として捉え、それらをより少ないエネルギー・資源投入で提供する考え方、需要側対策、循環経済、リバウンド効果について確認するために参照。
https://www.ipcc.ch/report/ar6/wg3/chapter/chapter-5/ -
Intergovernmental Panel on Climate Change(2022)
Climate Change 2022: Mitigation of Climate Change, Working Group III, Chapter 11: Industry.
産業部門における材料効率、資源需要の削減、製品の長寿命化、再利用、リサイクル、循環経済による温室効果ガス排出と一次資源需要の削減可能性を確認するために参照。
https://www.ipcc.ch/report/ar6/wg3/chapter/chapter-11/
食品ロス・食品廃棄物
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United Nations Environment Programme(2024)
Food Waste Index Report 2024.
家庭、外食、小売などから発生する世界の食品廃棄物について、その規模、測定方法、削減策を確認するために参照。2022年に世界で約10.5億トンの食品廃棄物が発生したとの推計の根拠として使用。
https://www.unep.org/resources/publication/food-waste-index-report-2024 -
消費者庁(2026)
「2024(令和6)年度食品ロス量推計値の公表について」
日本の2024年度食品ロス量について、総量461万トン、食品関連事業者から発生する事業系食品ロス237万トン、一般家庭から発生する家庭系食品ロス224万トンという推計値を確認するために参照。
https://www.caa.go.jp/notice/entry/046549/
電子廃棄物・耐久性・修理可能性・循環型製品
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International Telecommunication Union & United Nations Institute for Training and Research(2024)
The Global E-waste Monitor 2024.
世界の電子廃棄物の発生量と回収・リサイクル状況を確認するために参照。2022年に約6,200万トンの電子廃棄物が発生し、正式に適切な回収・リサイクルが記録された割合が22.3%だったことを確認するために使用。
https://unitar.org/about/news-stories/press/global-e-waste-monitor-2024-electronic-waste-rising-five-times-faster-documented-e-waste-recycling -
European Commission
“Ecodesign for Sustainable Products Regulation.”
EUにおいて、製品の耐久性、再利用性、アップグレード可能性、修理可能性、資源効率、リサイクル可能性などを製品政策へ組み込む制度の考え方を確認するために参照。
https://commission.europa.eu/energy-climate-change-environment/standards-tools-and-labels/products-labelling-rules-and-requirements/ecodesign-sustainable-products-regulation_en -
Intergovernmental Panel on Climate Change(2022)
Climate Change 2022: Mitigation of Climate Change, Working Group III, Chapter 11: Industry.
製品の長寿命化、材料使用量の削減、再使用、高品質なリサイクルなどを組み合わせることで、一次資源の生産需要と産業部門の環境負荷を削減できる可能性を確認するために参照。
https://www.ipcc.ch/report/ar6/wg3/chapter/chapter-11/
アラル海・大規模開発と環境破壊
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NASA Earth Observatory
“World of Change: Shrinking Aral Sea.”
中央アジアのアラル海について、大規模な灌漑事業による河川水の転用と、長期的な湖面縮小を衛星画像から確認するために参照。資本主義以外の経済体制でも、生産目標や大規模開発を優先すれば深刻な環境破壊が起こり得る事例として使用。
https://earthobservatory.nasa.gov/Features/WorldOfChange/aral_sea.php -
United Nations Environment Programme(2017)
“The Changing Aral Sea.”
アムダリヤ川とシルダリヤ川からの流入、水利用、農業・産業・地域社会との関係、アラル海の縮小と水管理問題を確認するために参照。
https://www.unep.org/resources/emerging-issues/changing-aral-sea -
United Nations Environment Programme(2014)
The Future of the Aral Sea Lies in Transboundary Cooperation.
水源の大規模な転用によってアラル海が縮小し、環境、経済、社会へ広範な影響が生じたことと、国境を越えた水資源管理の必要性を確認するために参照。
https://www.unep.org/resources/report/future-aral-sea-lies-transboundary-cooperation-wmo-bulletinbased-unep-global




