外国人犯罪は本当に増加しているのか?件数・犯罪率・在留外国人数から検証

外国人犯罪をめぐる議論では、同じ統計を見ながら、正反対の結論が語られることがあります。
「外国人犯罪は急増している」という人がいる一方で、「外国人が増えたのだから件数が増えるのは当然であり、犯罪率は高くない」という反論もあります。さらに、「外国人犯罪という言葉自体が差別を助長する」として、問題を論じることそのものを避けようとする空気もあります。
しかし、治安は感情だけで判断すべき問題ではありません。外国人を一括りにして危険視することも、懸念をすべて偏見として処理することも、どちらも実態を見えなくします。
必要なのは、何を「外国人犯罪」と呼んでいるのかを確認し、検挙件数、検挙人員、在留外国人数、在留資格、犯罪類型を分けて見ることです。
外国人犯罪をめぐる議論では、同じ統計を見ながら、正反対の結論が語られることがあります。
2026年7月時点で確認できる2025年の確定値を基に、先に結論を示すと、次のようになります。
- 2025年の来日外国人犯罪は、検挙件数・検挙人員ともに3年連続で増加した
- とりわけ刑法犯の検挙件数は前年比31.4%増えており、「直近で増えていない」とは言えない
- ただし、2025年の水準は2004~2005年頃のピークを下回っており、「過去に例のない水準」とも言えない
- 在留外国人と外国人入国者も増えているため、件数の増加だけでは個人当たりの危険性が上がったとは証明できない
- 公表統計だけから、日本人と外国人の厳密な「犯罪率」を比較することは難しい
- 実態を把握するには、国籍の単純な順位よりも、在留資格、正規・不法滞在、犯罪類型、共犯性を確認する必要がある
したがって、最も正確な答えは、「外国人犯罪は直近の絶対数では明確に増えている。しかし、外国人一人当たりの犯罪率まで一律に上昇したとは、現在の集計だけでは断定できない」となります。
1. 外国人犯罪の統計を見る前に知っておきたい四つの違い
外国人犯罪を扱う統計は、定義を確認せずに数字だけを並べると、簡単に誤読できます。
1.1. 外国人全体と「来日外国人」は同じではない
日常会話でいう外国人は、日本国籍を持たない人全体を指します。
一方、警察庁統計の「来日外国人」は、外国人全員ではありません。警察庁は、我が国に存在する外国人のうち、永住者、永住者の配偶者等、特別永住者などの定着居住者、在日米軍関係者、在留資格不明者を除いた者を「来日外国人」としています。
この定義には、技能実習、留学、特定技能、技術・人文知識・国際業務、短期滞在、定住者、日本人の配偶者等などが含まれます。その一方で、日本で長く生活する永住者は除外されます。
つまり、「来日外国人犯罪が増えた」という統計を、そのまま「日本で暮らすすべての外国人による犯罪が同じ割合で増えた」と読み替えることはできません。
実際、警察庁は2025年から、来日外国人とは別に「永住者」の検挙状況を詳しく掲載しています。2025年の永住者による総検挙件数は4,094件、総検挙人員は3,175人で、いずれも前年より減少しました。
1.2. 認知件数と検挙件数は違う
認知件数とは、警察が犯罪の発生を認知した事件の数です。
検挙件数とは、警察が被疑者を特定し、送致・送付、微罪処分などを行った事件の数です。前年以前に発生した事件が、その年に検挙される場合もあります。
外国人犯罪の統計で中心となるのは検挙件数です。未解決事件では被疑者の国籍や在留資格が分からないため、認知段階ですべての犯罪を日本人と外国人に正確に分けることができないからです。
このため、外国人について一般に「犯罪率」と呼ばれている数値の多くは、厳密には認知件数を基にした犯罪率ではなく、検挙件数または検挙人員を人口で割った参考値です。
1.3. 検挙件数と検挙人員も違う
検挙件数は事件の数、検挙人員は検挙された被疑者の数です。
一人が多数の窃盗を繰り返せば、検挙人員は一人でも検挙件数は何十件にもなることがあります。反対に、一件の犯罪を複数人で行えば、検挙件数一件に対して検挙人員が複数になる場合があります。
したがって、検挙件数の急増が、同じ割合で犯罪を行った人の増加を意味するとは限りません。
1.4. 刑法犯と特別法犯を分ける必要がある
刑法犯には、殺人、強盗、暴行、傷害、窃盗、詐欺などが含まれます。
特別法犯には、入管法違反、薬物事犯、銃刀法違反、風営適正化法違反などが含まれます。
外国人には在留期限や就労範囲を定める入管法が適用されるため、日本人には成立しない不法残留などの違反があります。外国人と日本人の犯罪傾向を比べる場合、刑法犯と入管法違反を混ぜると比較がゆがみます。
治安への影響を見るときは、総検挙状況だけでなく、刑法犯、特別法犯、さらに窃盗、詐欺、凶悪犯などの内訳まで確認する必要があります。
2. 2025年の来日外国人犯罪は直近では明確に増加している
警察庁の「令和7年における組織犯罪の情勢」によると、2025年の来日外国人犯罪は次のようになっています。
| 区分 | 2024年 | 2025年 | 前年比 |
|---|---|---|---|
| 総検挙件数 | 21,794件 | 25,480件 | 16.9%増 |
| 総検挙人員 | 12,170人 | 12,777人 | 5.0%増 |
| 刑法犯検挙件数 | 13,405件 | 17,614件 | 31.4%増 |
| 刑法犯検挙人員 | 6,368人 | 7,333人 | 15.2%増 |
| 特別法犯検挙件数 | 8,389件 | 7,866件 | 6.2%減 |
| 特別法犯検挙人員 | 5,802人 | 5,444人 | 6.2%減 |
総検挙件数と総検挙人員は、2023年から3年連続で増加しました。
特に注意すべきなのは、2025年の増加が入管法違反の増加によって生じたわけではないことです。特別法犯は減少した一方で、窃盗や詐欺などを含む刑法犯が大きく増えています。
刑法犯検挙件数は一年で4,209件増えました。率にして31.4%増です。刑法犯検挙人員も965人増えています。
したがって、「外国人が増えたように見えるだけで、来日外国人による一般的な犯罪は増えていない」という説明は、2025年の確定値とは一致しません。少なくとも直近の件数と人員は増加しています。
ただし、検挙件数が31.4%増えたのに対し、検挙人員の増加は15.2%です。件数の伸びが人員の伸びを大きく上回っています。
これは、一部の被疑者や集団による連続犯が件数を押し上げた可能性を示します。検挙件数だけを見て「犯罪を行う外国人の人数が31.4%増えた」と解釈するのは誤りです。
2025年の日本全体の刑法犯検挙件数は30万1,055件、検挙人員は20万663人でした。そのうち来日外国人が占める割合は、検挙件数で5.9%、検挙人員で3.7%です。警察庁によれば、この割合も2023年から3年連続で上昇しています。
この点でも、直近の治安上の変化を「何も起きていない」と扱うことはできません。
3. 長期で見ると2004~2005年頃のピークは下回っている
直近の増加が事実である一方、長期推移を見ると別の姿が見えます。
| 年 | 総検挙件数 | 総検挙人員 |
| 2005年 | 47,865件 | 21,178人 |
| 2019年 | 17,260件 | 11,655人 |
| 2022年 | 14,662件 | 9,548人 |
| 2023年 | 18,088件 | 11,534人 |
| 2024年 | 21,794件 | 12,170人 |
| 2025年 | 25,480件 | 12,777人 |
来日外国人犯罪の総検挙件数は2005年、総検挙人員は2004年にピークを迎えました。
2025年の総検挙件数は2005年より46.8%少なく、総検挙人員も2005年より39.7%少ない水準です。
一方、日本にいる外国人の数は大きく増えています。2005年末の外国人登録者数は201万1,555人でした。2025年末の在留外国人数は412万5,395人で、単純な人数では約2倍です。統計制度や対象範囲が異なるため完全な連続比較ではありませんが、少なくとも外国人の居住規模が大幅に拡大したことは明らかです。
外国人入国者数も、2005年の約745万人から2025年の4,243万930人へ増えました。
外国人の居住者と入国者が大幅に増えたにもかかわらず、来日外国人犯罪の検挙件数と検挙人員は2004~2005年のピークを下回っています。
したがって、「外国人犯罪は数十年間、一貫して爆発的に増え続けている」という説明は正確ではありません。
より正確には、2000年代半ばのピークから大きく減少し、2010年代後半から2020年代前半は比較的低い水準で推移した後、2023年以降は再び増加局面に入っていると整理すべきです。
過去最高ではないから問題がないわけではありません。反対に、直近3年で増えたから長期でも最悪になったわけではありません。長期と短期のどちらか一方だけを切り取らないことが重要です。
4. 在留外国人数の増加を考慮するとどう見えるのか
2025年末の在留外国人数は412万5,395人で、前年末より35万6,418人、9.5%増えました。初めて400万人を超え、過去最高となっています。
この事実から、「外国人が9.5%増えたのだから、外国人犯罪が増えるのは当然だ」という説明がなされます。
しかし、2025年の数字を比べると、指標によって結果が異なります。
- 在留外国人数は9.5%増
- 来日外国人犯罪の総検挙件数は16.9%増
- 総検挙人員は5.0%増
- 刑法犯検挙件数は31.4%増
- 刑法犯検挙人員は15.2%増
総検挙人員の伸びは在留外国人数の伸びを下回ります。一方、総検挙件数と刑法犯の件数・人員は、在留外国人数の伸びを上回っています。
ただし、この比較も厳密な犯罪率にはなりません。理由は、分子と分母の範囲が一致していないからです。
在留外国人数には永住者や特別永住者が含まれますが、来日外国人犯罪の分子からはこれらの人が除かれます。反対に、来日外国人犯罪には短期滞在者が含まれますが、年末の在留外国人数には原則として短期滞在者が含まれません。
警察庁は、2025年6月末の「総在留外国人数」から永住者、永住者の配偶者等、特別永住者を除いた対象を約349万人としています。しかし、この総在留外国人数には、その時点で日本にいる短期滞在者なども加えられています。
2025年の外国人入国者数は4,243万930人、新規入国者数だけでも3,918万4,525人です。同じ人が再入国する場合もあるため人数そのものではありませんが、短期滞在者を含む来日外国人について、ある一日の滞在者数を一年間の犯罪の分母にすることが適切でないことは分かります。
つまり、来日外国人の厳密な犯罪率を出すには、単純な年末人口ではなく、在留資格ごとの年間の滞在人年を分母にする必要があります。
5. 「外国人の犯罪率」は公表統計から簡単には出せない
警察統計における犯罪率は、本来、人口10万人当たりの認知件数を指します。また、人口10万人当たりの検挙人員は、犯罪者率と呼ばれます。
しかし、外国人別の認知件数は、すべての事件について作ることができません。未解決事件では、被疑者が日本人なのか外国人なのかが確定していないためです。
そこで、外国人の犯罪率として、次のような計算が使われることがあります。
外国人の刑法犯検挙人員 ÷ 在留外国人数 × 10万人
この計算は参考にはなりますが、公式な犯罪率ではありません。
分子に短期滞在者や在留資格不明者が入り、分母が在留外国人だけであれば、率は実態より高くなります。日本人側の分母に犯罪の少ない子どもや高齢者を多く含め、外国人側は就労年齢層が中心であれば、年齢構成の違いも結果に影響します。男女比、所得、居住地域、在留期間も調整されていません。
さらに、検挙人員は有罪判決を受けた人数ではありません。警察に検挙された被疑者の数です。検挙されていない犯罪や、後に不起訴・無罪となる事案もあるため、「実際に犯罪をした人の割合」と完全には一致しません。
したがって、「外国人の犯罪率は日本人の何倍」と小数点まで示す数字を見た場合は、少なくとも次の点を確認する必要があります。
- 分子は認知件数、検挙件数、検挙人員のどれか
- 刑法犯だけか、入管法違反を含むか
- 来日外国人か、永住者を含む外国人全体か
- 分母に短期滞在者をどう反映したか
- 年齢、性別、滞在期間を調整したか
これらを示さずに作られた「犯罪率」は、政策判断の根拠としては弱いものです。
6. 在留資格別に刑法犯検挙人員を人口で割ると何が見えるのか
比較の限界を明示した上で、2025年の正規滞在者について、刑法犯検挙人員を2025年6月末の在留者数で割った参考値を確認します。
特別法犯を除き、可能な限り分子と分母を正規滞在者にそろえたものです。
| 在留資格 | 正規滞在の刑法犯検挙人員 | 2025年6月末の在留者数 | 10万人当たり参考値 |
| 特定技能 | 362人 | 336,196人 | 約108人 |
| 技術・人文知識・国際業務 | 814人 | 458,109人 | 約178人 |
| 技能実習 | 805人 | 449,432人 | 約179人 |
| 留学 | 1,021人 | 435,203人 | 約235人 |
| 永住者 | 2,482人 | 932,090人 | 約266人 |
| 定住者 | 1,090人 | 225,914人 | 約483人 |
この表は「犯罪率の確定値」ではありません。年の途中の在留者数を分母にした粗い参考値であり、年齢、性別、在留期間、地域、同一人物の数え方などを調整していません。
それでも、外国人を一つの集団として扱うことの危うさは見えてきます。
検挙人員の総数だけを見ると技能実習が最多ですが、刑法犯に限り、不法滞在者を除いて在留者数で割ると、特定技能、技能実習、技術・人文知識・国際業務、留学、永住者、定住者で大きな差があります。
「外国人だから」という一要因だけで説明するより、在留資格が示す就労環境、生活基盤、滞在の安定性、年齢構成、来日前後の審査、受け入れ企業や仲介業者の管理などを見た方が、政策上は有益です。
また、永住者や定住者の参考値が短期の就労資格より高く見えることからも、「新たに来日した外国人だけが問題で、長く住めば自動的に差が消える」とも断定できません。反対に、この表だけで在留資格自体が犯罪の原因だと結論づけることもできません。
必要なのは、年齢・性別を調整した在留資格別の犯罪者率を政府が継続的に公表することです。
短期滞在については、2025年の総検挙人員が2,166人、刑法犯検挙人員が816人でした。しかし、短期滞在者は年間を通して入れ替わるため、年末や6月末の滞在者数を分母にした率は掲載していません。
7. 何の犯罪が増えたのか
外国人犯罪の増減を判断するとき、総数だけでなく犯罪類型を見る必要があります。
2025年の来日外国人による刑法犯検挙件数1万7,614件のうち、窃盗犯は1万2,226件で69.4%を占めました。検挙人員でも、7,333人のうち窃盗犯が3,030人で41.3%を占めています。
主な刑法犯の変化は次のとおりです。
| 犯罪類型 | 2024年の検挙件数 | 2025年の検挙件数 | 増減 |
| 凶悪犯 | 260件 | 295件 | 13.5%増 |
| 粗暴犯 | 1,340件 | 1,566件 | 16.9%増 |
| 窃盗犯 | 9,103件 | 12,226件 | 34.3%増 |
| 知能犯 | 769件 | 1,368件 | 77.9%増 |
| 風俗犯 | 340件 | 335件 | 1.5%減 |
| その他の刑法犯 | 1,593件 | 1,824件 | 14.5%増 |
件数の増加を最も大きく押し上げたのは窃盗犯です。一方、伸び率では詐欺などを含む知能犯が77.9%増と大きくなっています。
窃盗の手口を見ると、2025年の侵入窃盗4,340件のうち、ベトナムが3,018件で69.5%を占めました。万引き3,181件ではベトナムが1,857件で58.4%です。自動車盗234件ではブラジルが98件、ベトナムが77件でした。
詐欺1,144件では、ベトナムが382件、中国が347件、マレーシアが151件となっています。
ただし、国籍別の件数は、その国籍の人全体の傾向ではありません。少数の集団による広域・連続事件が件数を大きく押し上げることがあるためです。
警察庁は、2025年の来日外国人による刑法犯検挙件数のうち、共犯事件の割合が45.3%で、日本人の11.5%の約3.9倍だったとしています。住宅対象の侵入窃盗では来日外国人の共犯率が70.8%、日本人は10.9%、万引きでは来日外国人31.8%、日本人3.6%でした。
この違いは、外国人個人の属性というよりも、海外の指示役、運搬役、換金役などが分業する広域犯罪や、同郷者間のネットワークを利用した組織犯罪への対策が必要であることを示します。
2025年中に検挙された来日外国人による財産犯の被害総額は約162億2,300万円でした。このうち窃盗犯被害が約65億700万円、知能犯被害が約96億5,500万円です。
単に「殺人が何件増えたか」だけで治安への影響を測ることはできません。多数の店舗や住宅が被害を受ける連続窃盗、詐欺、盗品の海外搬出は、被害額、警備費、保険料、捜査負担を社会に発生させます。
8. 特別法犯を混ぜると見え方が変わる
2025年の来日外国人による特別法犯は、検挙件数7,866件、検挙人員5,444人で、いずれも前年より6.2%減りました。
そのうち入管法違反は5,121件、3,349人で、特別法犯検挙件数の65.1%、検挙人員の61.5%を占めます。
総検挙人員1万2,777人を正規・不法滞在別に見ると、正規滞在が70.2%、不法滞在が29.8%です。
しかし、刑法犯と特別法犯を分けると構成が変わります。
- 刑法犯検挙人員7,333人のうち、正規滞在者は6,745人、不法滞在者は588人
- 特別法犯検挙人員5,444人のうち、正規滞在者は2,226人、不法滞在者は3,218人
刑法犯では正規滞在者が約92%を占めます。特別法犯では不法滞在者が約59%を占めます。
このため、「不法滞在者だけを取り締まれば外国人による窃盗や詐欺の大半がなくなる」とは言えません。一方、不法残留や不法就労を放置すれば、地下銀行、偽造在留カード、偽装結婚、不法就労あっせんなどの犯罪基盤を温存することになります。
正規滞在者への審査・管理と、不法滞在・不法就労への対策は、どちらか一方ではなく同時に必要です。
9. 国籍別の順位だけでは原因を見誤る
2025年の来日外国人犯罪の総検挙人員1万2,777人を国籍・地域別に見ると、ベトナム4,167人、中国2,062人、フィリピン714人、タイ642人、ブラジル561人の順です。
ベトナムと中国の2か国で、総検挙人員の約半数を占めます。
この数字を無視する必要はありません。国籍や言語を共有する犯罪集団、国外の指示役、盗品の搬出先が存在する場合、捜査上は国籍・地域別の分析が欠かせないからです。
しかし、国籍別の検挙人員だけを見て、国民性や民族性に原因を求めるのは短絡的です。
国籍ごとに日本で暮らす人数、在留資格、年齢、職種、地域、滞在期間が異なります。技能実習生が多い国、留学生が多い国、永住者が多い国では、生活条件も検挙されやすい犯罪類型も変わります。
また、組織的な連続窃盗では、少人数の集団が数百件を起こすことがあります。その場合、国籍別の検挙件数は大きくなっても、その国籍の住民全体に犯罪傾向が広がったことにはなりません。
政策として見るべきなのは、「どの国籍が悪いか」ではなく、次のような点です。
- どの在留資格と就労環境で刑法犯が増えているのか
- 一人当たりの単発犯か、組織的な連続犯か
- 国内で完結する犯罪か、国外の指示役や換金先がある犯罪か
- 正規滞在中の犯罪か、不法残留後の犯罪か
- 受け入れ企業、監理団体、学校、仲介業者に問題がなかったか
- 来日前の審査、在留更新、失踪後の追跡が機能しているか
国籍別統計は捜査の入口にはなりますが、移民政策の原因分析としては不十分です。
10. 「増えている説」と「増えていない説」を検証する
ここまでの統計を基に、よくある主張を整理します。
10.1. 「外国人犯罪は3年連続で増えている」
これは来日外国人の総検挙件数・人員について事実です。2025年は刑法犯の件数・人員も増えています。
10.2. 「外国人犯罪は過去最悪になった」
誤りです。2025年の総検挙件数と人員は、2004~2005年頃のピークを大きく下回ります。
10.3. 「増えたのは外国人の人数が増えたからだけである」
断定できません。2025年は、総検挙人員の伸びは在留外国人数の伸びを下回りますが、刑法犯検挙件数・人員の伸びは上回ります。短期滞在者を含む適切な分母も不足しています。
「人口増加が一部を説明する」は妥当ですが、「すべて人口増加で説明できる」とする根拠はありません。
10.4. 「外国人の犯罪率は日本人より必ず高い」
現在の集計だけでは断定できません。分子・分母の範囲、年齢、性別、短期滞在者、在留期間をそろえた比較が必要です。
在留資格別の粗い参考値には差がありますが、それを外国人全体の一つの犯罪率にまとめるべきではありません。
10.5. 「犯罪率が同じなら受け入れを増やしても問題はない」
これも政策論としては成り立ちません。
仮に日本人と外国人の犯罪発生割合が完全に同じでも、受け入れる人口が増えれば、犯罪を行わない人も増える一方、犯罪の絶対件数も一定数増えます。被害者にとって重要なのは、統計上の割合だけでなく、避けられたはずの被害が追加で発生したかどうかです。
さらに、言語対応、通訳、国外照会、逃亡防止、送還、被害回復には追加の行政・捜査費用がかかります。国外の指示役や換金先が関与すれば、捜査と被害回復はさらに難しくなります。
犯罪率が同じか低いことは、受け入れ拡大の十分条件ではありません。
10.6. 「外国人犯罪を論じること自体が差別である」
個人を国籍だけで犯罪者扱いすることは不当です。しかし、公的統計に基づいて政策の影響と治安上の課題を検討することは差別ではありません。
むしろ、問題を語れない状態にすると、実際に法を守って暮らす外国人まで、根拠のない疑念を向けられます。事実を細かく分けて示すことが、無関係な人への一般化を防ぎます。
11. 移民に反対する立場は「外国人は犯罪者だから」で組み立てるべきではない
神格反転では、外国人労働者と実質的な移民受け入れの拡大には基本的に反対しています。
ただし、その理由を「外国人は日本人より犯罪を行う」といった一つの命題だけに依存させるべきではありません。
現在の統計から確実に言えるのは、次の点です。
- 来日外国人犯罪は直近3年間で増加している
- 2025年は窃盗、詐欺などの刑法犯が大きく増えた
- 一部の犯罪では共犯性と組織性が日本人より高い
- 在留資格によって検挙状況に大きな差がある
- 永住者を含む外国人全体と来日外国人を分けなければならない
- 厳密な日本人との犯罪率比較に必要な統計は不足している
これらは、無制限な受け入れ拡大に慎重であるべき理由の一部になります。
移民政策は、平均的な外国人が善人か悪人かを決める制度ではありません。政府が、どれほどの人数を、どの条件で、どの地域と産業へ受け入れ、追加される利益・費用・危険を誰が負担するかを決める制度です。
受け入れ企業が安価な労働力から利益を得る一方、警察、自治体、学校、医療機関、地域住民、犯罪被害者が費用を負担するのであれば、その構造は公平ではありません。
犯罪率が日本人と同程度だったとしても、人手不足を理由に受け入れ人数を増やし続ければ、対応総量は増えます。しかも、国外逃亡や国境を越えた犯罪ネットワークが関係する事件は、同じ一件でも捜査・回収の難度が異なります。
だからこそ、移民政策では「差別か共生か」という抽象論ではなく、受け入れ上限、在留資格、地域別の収容力、雇用主の責任、違反時の費用負担まで設計する必要があります。
移民受け入れに反対する理由全体については、「移民受け入れに反対する理由とは?感情論ではなくデータで考える日本の移民政策」で詳しく整理しています。
移民の受け入れのメリットやデメリットは、「日本の移民問題とは?移民受け入れのメリット・デメリットをデータで検証」でも解説しています。
12. 必要なのは受け入れ拡大の前に検証可能な制度を作ること
治安への懸念を、外国人への感情的な敵意に変えるべきではありません。一方で、「共生」という言葉を使って、政策によって追加される危険や費用を隠すべきでもありません。
最低限、次の対策が必要です。
12.1. 在留資格・年齢・性別・滞在期間別の統計を公表する
国籍別の件数だけでは、人口構成と受け入れ制度の影響を分離できません。
刑法犯について、在留資格、正規・不法滞在、年齢、性別、在留年数、単独・共犯、再犯の有無を組み合わせた匿名統計を公表するべきです。
分母には、年末人口ではなく年間平均在留者数または滞在人年を用いる必要があります。
12.2. 受け入れ企業と仲介業者に費用を負担させる
採用による利益は企業に帰属する一方、失踪、不法就労、通訳、生活支援、事件対応の費用が地域へ転嫁されがちです。
受け入れ企業、監理団体、登録支援機関、学校、仲介業者について、適正な賃金、住居、社会保険、転職・離職時の届出、支援記録を確認し、重大な違反を繰り返す事業者は受け入れから排除すべきです。
12.3. 不法残留者だけでなく犯罪基盤を作る側を取り締まる
不法就労者を雇う企業、偽造書類を作る仲介業者、口座や携帯電話を調達する者、盗品の換金・輸出に関わる者を含めて取り締まらなければ、実行役だけが入れ替わります。
日本人や永住者が犯罪基盤を提供する場合もあるため、外国人だけを末端で摘発して終わらせるべきではありません。
12.4. 受け入れ人数に上限を設ける
審査、監督、警察、自治体、学校、医療、住宅が対応できる人数を超えて受け入れれば、制度の管理密度は下がります。
人手不足を申告した企業の希望人数を積み上げるのではなく、在留資格別、地域別、産業別に上限を設け、治安、失踪、賃金、行政費用を毎年検証する必要があります。
12.5. 国内の賃上げ・省力化を先に行う
人が集まらない仕事に外国人を入れる前に、賃金、労働時間、安全性、取引価格を改善すべきです。
低賃金や不安定な生活環境を維持したまま外国人を受け入れる政策は、日本人労働者の待遇改善を遅らせるだけでなく、外国人を困窮と孤立へ追い込み、失踪や違法就労の危険も高めます。
受け入れを抑えることと、すでに日本で法を守って暮らす外国人の権利を守ることは両立します。
13. まとめ|直近の増加は事実だが、数字を正しく分けて見る必要がある
外国人犯罪は本当に増えているのか。
2025年の来日外国人犯罪について答えるなら、検挙件数・検挙人員ともに増えています。刑法犯検挙件数は前年比31.4%増え、窃盗と知能犯の増加が目立ちました。直近の増加を否定することはできません。
一方、2025年の総検挙件数と人員は、2004~2005年頃のピークを下回っています。在留外国人数と外国人入国者数が大きく増えていることも考慮する必要があります。
したがって、「外国人犯罪が史上最悪の勢いで増えている」も、「外国人犯罪はまったく増えていない」も、どちらも正確ではありません。
また、公表されている検挙統計と年末人口を単純に割るだけでは、日本人と外国人の厳密な犯罪率比較にはなりません。来日外国人と永住者、刑法犯と特別法犯、件数と人員、正規滞在と不法滞在を分ける必要があります。
ただし、犯罪率を厳密に証明できないからといって、治安上の懸念を無視してよいわけではありません。
政府が政策として外国人の受け入れ人数を増やす以上、追加される被害、捜査負担、行政費用を検証し、受け入れによって利益を得る企業にも責任を負わせるべきです。
個々の外国人を属性だけで危険視しないこと。そして、政策が生む危険と費用を「差別」という言葉で見えなくしないこと。
この二つを両立させた上で、受け入れ人数そのものを慎重に判断する必要があります。
14. 見えない構造を読み解きたいあなたへ|神格反転の書
私たちは、目の前で起きている出来事だけを見て、自分を責めてしまうことがあります。
- 努力しても報われないのは、自分に能力がないから。
- 仕事が苦しいのは、忍耐力がないから。
- 何をしても満たされないのは、感謝が足りないから。
しかし、個人の問題に見える苦しみの背後には、社会、お金、教育、労働、人間関係などの構造が存在します。
見えない構造を知らなければ、本来は仕組みの問題であることまで、自分の責任として背負わされます。神格反転の書では、人生と社会の背後にある見えにくい構造を読み解くための入り口をまとめています。
学歴や企業から与えられた評価だけで、自分の価値を決めたくない方は、ぜひ受け取ってみてください。
説明文よりも物語で見えない構造を読み解きたい方は物語も用意しています。社会の構造、奪う者と創る者、そして真実を取り戻す物語を、文章やイラストの形で展開しています。
こちらは有料ではありますが、1話から3話のみ無料でお読み頂くことが可能です。もしも説明文ではなく、物語の世界を探検したいという場合は、物語録をチェックしてみてください。
※現在は小説のみ公開中ですが、順次完成次第、対話録、漫画録を更新して参ります。
敵は嘘により栄え、真実により滅ぶ。
やっていることが、その人の正体。
15. 参考文献・一次資料
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警察庁(2026)
「令和7年における組織犯罪の情勢」
来日外国人犯罪の検挙件数・検挙人員、刑法犯・特別法犯の内訳、国籍別・在留資格別・犯罪類型別の動向を確認するために参照。
https://www.npa.go.jp/news/release/r7jyousei_shuusei.pdf -
警察庁(2026)
「犯罪統計資料 令和7年1~12月分【確定値】」
令和7年における刑法犯の認知件数、検挙件数、検挙人員と、罪種別の全国的な犯罪動向を確認するために参照。
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/file-download?fileKind=2&statInfId=000040410682 -
警察庁(2026)
「令和7年の犯罪情勢」
日本国内における犯罪の認知・検挙状況、罪種別の増減、近年の犯罪情勢全体を確認するために参照。
https://www.npa.go.jp/publications/statistics/crime/situation/r7_hanzaijyousei__.pdf -
出入国在留管理庁(2026)
「令和7年末現在における在留外国人数について」
令和7年末の在留外国人数と、国籍・地域別、在留資格別、都道府県別の構成を確認するために参照。
https://www.moj.go.jp/isa/publications/press/13_00062.html -
出入国在留管理庁(2025)
「令和7年6月末現在における在留外国人数について」
令和7年6月末の在留外国人数と在留資格別の構成を確認し、正規滞在者の刑法犯検挙人員と比較する際の参考値として参照。
https://www.moj.go.jp/isa/publications/press/13_00057.html -
出入国在留管理庁(2026)
「令和7年における外国人入国者数及び日本人出国者数等について」
外国人入国者数、再入国者数、短期滞在者を含む人の流動を確認し、在留外国人数だけでは外国人犯罪の母数を捉えられない点を検討するために参照。
https://www.moj.go.jp/isa/publications/press/13_00060.html -
警察庁(2025)
「令和6年の刑法犯に関する統計資料」
令和6年における刑法犯の認知件数、検挙件数、検挙人員、罪種別の動向を確認し、令和7年との比較に用いるために参照。
https://www.npa.go.jp/toukei/seianki/R06/r06keihouhantoukeisiryou.pdf -
法務省
「2005年末現在における外国人登録者統計」
来日外国人犯罪の検挙件数が高水準にあった2005年当時の外国人登録者数を確認し、現在との長期比較に用いるために参照。
https://www.moj.go.jp/isa/content/001359136.pdf




